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相談員からのアドバイス「分譲マンションに住むということ」

〜みんなでつくる快適分譲マンションライフ〜

分譲マンションは、"鍵一本で干渉されることのない自由な生活"というイメージがあるようですが、一棟の建物の中で大勢の人たちが共同生活を営むので、その住まい方には戸建て住宅とは違った生活上のルール、制約があります。
「こんなはずではなかった・・・」と後悔しないために、分譲マンションの特殊性やその管理について心得ておきましょう。あらかじめ知っておくことが快適な分譲マンションライフにつながります。

 

「相談員からのアドバイス」は、住まいに関する相談事例をもとに一般的な参考情報をとりまとめています。(断定的な判断材料等を提供するものではありません)

 

 

 

 

 

 

 

5 快適分譲マンションライフ

1 分譲マンションの特殊性を理解する

単純ではない分譲マンションの権利関係・・・ひとつの建物に専有部分と共用部分がある

戸建て住宅や賃貸住宅との違いを理解する

戸建て住宅と賃貸マンションは、一般的に所有者は一人である場合が多く、建物・土地の維持管理もその所有者の責任において意思決定して行うことができます。一方、分譲マンションは、一棟の建物に複数の住戸があり、複数の所有者(区分所有者)がいます。
エントランスホールから各住戸までには廊下や階段等があり、それら全部でひとつの建物ができあがっているので、分譲マンションを購入するということは、住戸(専有部分)のみではなく、共用部分も購入することになります。共用部分は区分所有者全員で共同管理しなければなりません。区分所有法(※)でもそのように規定されています。
共用部分の使い方や変更については、管理規約や総会で決められ、個人の自由にはなりません。

【分譲マンションと賃貸マンション、戸建て住宅との違い】(一般的なケースを紹介しています。)
  分譲マンション 賃貸マンション 戸建て住宅
所有者 複数 一人 一人
建物の権利関係

専有部分:各区分所有者が所有

共用部分:全区分所有者(複数)で共有

貸主が全体を所有 個人が全体を所有
敷地の権利関係 全区分所有者(複数)で共有 貸主が全体を所有 個人が全体を所有
維持管理

専有部分:各区分所有者が行う

共用部分:管理規約や総会決議に基づき、全区分所有者(複数)が行う

貸主が行う 個人が行う

※区分所有法(「建物の区分所有等に関する法律」の略)


一棟の建物を区分所有する場合の所有関係を定めるとともに、建物及び敷地等の共同管理について定めた法律。

分譲マンションの所有権は?

  • 民法では建物の一部を対象とする所有権は認められないのが原則

私たちが円満に生活できるように「人」と「人」との関係および「人」と「物」との関係について定めている「民法」という法律があります。民法は、原則的に法令の制限内で目的物を自由に使用、収益、処分できる権利(所有権)は、ひとつの物に対してはひとつしか認めていません。この原則によると分譲マンションの場合も、一棟の建物全体について一個の所有権が成立するだけで、建物の一部(一戸)を対象とする所有権は認められないことになります。それでは分譲マンションを購入した目的を果たすことができないという不都合が生じてしまいます。

  • 民法の特別法である「区分所有法」で修正

建物の部分ごとに、分譲マンションでいえば一戸ごとに所有権を認めるには、例外規定が必要となり、民法の特別法である「区分所有法」が昭和37年に制定され、社会情勢に応じて改正されて現在に至っています。

2 分譲マンションを管理・運営する

分譲マンションの主役は管理組合・・・所有者であるあなたは、管理組合の構成員

管理組合

管理組合は、分譲マンションの専有部分以外の共有財産(共用部分)の維持管理と共同生活の秩序維持を目的とした区分所有者全員で構成する団体です。管理組合は、区分所有法により、区分所有者が二人になった時点で設立の手続きをしなくても成立します。分譲マンションを購入して区分所有者となった人は、必ず管理組合の一員にならなければなりません。分譲マンションを購入してそこに住んでいない人(不在区分所有者)も管理組合の一員です。
国土交通省が、マンション管理の重要事項に関する標準指針(マンション管理標準指針)を示しています。

自治会

自治会は管理組合とは異なる組織です。自治会は地域コミュニケーションを図るとともに、地域生活の向上を目的として結成される任意の団体であり、居住者(借主も含まれる)の加入は基本的に自由です。管理組合とは目的が異なるので、混同しないようにしましょう。ただし、管理組合が積極的に自治会に協力すれば、地域とのコミュニケーションも円滑になり、地域の防災・防犯力のアップにつながります。

「管理規約」は分譲マンションの憲法・・・共同生活のルールは、なくてはならない重要な決まり

管理規約

一棟の大きな建物に複数の住戸があり、複数の所有者(区分所有者)が生活する分譲マンションで快適に暮らすためには、全員が守るべき生活のルールが必要になります。それぞれのマンションの実情に合わせて、共用部分の維持管理や生活上の基本ルールを定めたものが管理規約です。区分所有者だけでなく、区分所有者の家族、区分所有者から住戸を借りている人など、分譲マンションで生活している人は、この管理規約に従う義務があります。国が定めた標準管理規約がありますので参考にしましょう。

 

使用細則

管理規約の中の一定の事柄を使用細則により細かく定めることができます。たとえば、駐車場利用、駐輪場利用、ペット飼育の詳細や楽器の演奏時間の制限等を定めます。

 

マンションの法律・管理規約・使用細則の関係

快適な分譲マンションライフをおくるためには、管理規約や使用細則をよく読んで理解し、ルールを守ることが必要不可欠です。

「総会」は管理組合の最高意思決定機関・・・分譲マンションの重要事項は総会で決める

総会

総会には、毎年定期に行われる通常総会と、必要がある場合に応じて行われる臨時総会があり、建物の管理に関する重要なことは原則として総会で決議されます。出席できない場合でも、「議決権行使書」や代理人に委任する旨の「委任状」を提出して意思表示を行うことができます。自分たちの分譲マンションに関心を持ち、管理運営を理解するためにも積極的に出席しましょう。

理事会

区分所有者全員が毎回集まり総会を開くことは大変なので、管理組合の執行機関として理事会をつくります。予算や事業計画案など総会の議案を作成し、総会で決めたことを具体的に執行します。

管理組合の役員

一般的には、管理組合の役員は、理事長、副理事長、理事および監事等で構成されます。管理組合の運営では、区分所有者が公平に役割を分担することが望ましいことから、役員は抽選や順番で選ばれることが多くなっています。

 

管理組合をサポートするのが管理会社・・・管理会社との良好な関係を築く

管理会社

多くの管理組合では、分譲マンションの管理を管理会社に委託していますが、管理会社が何でもしてくれるわけではありません。管理会社は管理組合との委託契約に基づいて、委託された業務を行います。したがって、管理員の仕事も管理会社に委託された業務の範囲内となります。管理会社に管理業務を委託していても、分譲マンションの管理の主体はあくまで管理組合です。各区分所有者は管理組合の一員として、その業務内容を理解してチェックすることが必要です。

維持管理にはお金が必要・・・みんなで管理、みんなで負担

管理費・・・通常の管理に必要な費用

共用部分を維持管理するための費用で、たとえば、建物の共用部分の電気料金や水道料金、エレベーターなど設備の定期点検費用、管理会社への管理委託料、清掃費用等に使われます。

修繕積立金・・・大規模修繕等に備える積立金

将来の大規模な修繕に高額な費用がかかるため、計画的に毎月一定額を積立てます。その額は、適切な長期修繕計画に基づいた算定が必要です。修繕積立金の額が適正でないと、工事費用が足りないという問題が発生することもあり注意が必要です。平成30年度マンション総合調査(国土交通省)によると、戸あたりの管理費の平均は10,862円/月、修繕積立金の平均は11,243円/月でした。

平成23年4月には新築マンションの購入予定者に対し、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の目安を示すため「マンション修繕積立金に関するガイドライン」が策定されました。ガイドラインでは、10階建て、建築延床面積が8,000㎡のマンションの専有床面積80㎡の住宅について、修繕積立金の目安の平均値は16,160円/月、目安の幅は、11,200円/月〜21,200円/月までとなります。

 

3 分譲マンションをメンテナンスする

建物も健康診断が大切・・・建物の寿命はメンテナンス次第

点検

共用部分を維持管理するにはさまざまな点検が必要です。点検には建築基準法等で定められている法定点検とそれ以外の定期点検、日常の点検である保守点検があります。消防点検および排水管の清掃時には、住戸部分(専有部分)に業者が入室して作業をしますので協力しましょう。入室を拒んだために共用部分に不具合が生じると、責任を追及される場合があります。

長期修繕計画

長期修繕計画は、将来予想される修繕工事等を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するものです。区分所有者一人ひとりの大切な財産にかかわることなので、どのような計画が立てられているのか関心を持つことが大切です。長期修繕計画の計画期間は、新築マンションの場合は30年以上、既存マンションの場合は25年以上を設定します(標準管理規約第32条関係コメント、長期修繕計画作成ガイドライン)。建物の劣化状況や物価等の変動、時代に応じたグレードアップなど不確定な事項を含んでいますので5年程度ごとの見直しが必要です。国が定めた長期修繕計画標準様式がありますので参考にしましょう。

大規模修繕工事

建物や設備を維持していくためには、計画的な修繕が必要です。

一般的に、大規模修繕工事は、計画的な修繕とグレードアップのための改良を行う工事をいい、マンションを長持ちさせるためには非常に大切です。効率的な工事実施のため、複数の部位や工事項目をまとめて施工することが一般的です。
長期修繕計画で予定している時期が近づいてきたら、実施の時期や内容を検討します。

 

4 分譲マンションのコミュニティー

日々の生活で起こる問題いろいろ・・・良好な人間関係がトラブルの未然防止や早期解決につながる

平成30年度マンション総合調査(国土交通省)によると、トラブルのなかで「居住者間のマナーをめぐるもの」が55.9%と最も多く、その具体的な内容は「生活音」38.0%、「違法駐車」19.0%、「ペット飼育」18.1%などとなっています。「建物の不具合に係るもの」のトラブルの具体的な内容は「水漏れ」が18.7%と最多となっています。

生活音

分譲マンションでは、日常生活をするうえで上下左右の住戸から生活音等が聞こえてくることは、ある程度やむをえないことです。その音を騒音と感じるかどうかは、日ごろのあいさつなど、コミュニケーションが図られているかどうかで違ってきます。建具の開け閉めや歩き方に気遣うことや、早朝・深夜は水回りの使用を控えるなど、お互いに配慮して暮らすことも大切です。

ペット飼育

ペット飼育の可否については、その分譲マンションの管理規約や使用細則で取り決められています。ペット飼育が可能な場合、ペットの飼い主で「ペットクラブ」を結成してお互いに飼い方を話し合い、すべての居住者が快適に暮らせるように努力をしているマンションもあります。

駐車場・駐輪場の使用方法

駐車場

マンション内の敷地は広いので、来客時に少しだけなら駐車してもかまわないと思われがちですが、消防法上駐車してはいけない場所もあります。自己所有の車はきちんと車庫に入れ、来客の車に関してもルールを守って駐車しましょう。敷地内に来客用駐車場がない分譲マンションもあります。

 

駐輪場

自転車についても分譲マンションの敷地内のどこにとめてもよいわけではありません。ステッカーを貼るなど分譲マンションの居住者の自転車かどうかを区別して管理をしているところが多くあります。分譲マンション購入前に、一戸につき何台駐輪できるかを確認しておきましょう。駐輪場不足が問題になっている分譲マンションも多くあります。乗らない自転車はいつまでも駐輪場にとめておかず整理することも必要です。

 

 

 

 

 

廊下・階段の使用方法

廊下や階段は共用部分であり、通行のためだけでなく火災や地震が起きた時の避難経路にもなります。廊下・階段に物を置くことや自転車やベビーカーなどを放置することはやめましょう。防火戸の前にも物を置かないようにしましょう。日ごろから整理整頓を心がけましょう。

バルコニーの使用方法

バルコニーや専用庭は、各住戸部分と一緒になってはいますが、専有部分ではなく共用部分になります。その住戸の人だけが専用使用する権利が認められていますが、専用使用ができるからといってどのような使い方をしてもよいというわけではありません。たとえば大規模修繕工事(外壁改修工事など)のときはベランダに置いてあるものをすべて一時撤去する必要があります。管理規約や使用細則を守って利用しましょう。また、バルコニーのパーテション(仕切り)は、火災時などには突き破って隣に避難するための経路ともなりますので、付近には物置や植木などを置かないようにしましょう。

専有部分のリフォーム

住戸内は専有部分であるからといって自由にリフォームをしてもよいというわけではありません。リフォームをする場合には、管理規約で工事内容や届出等に関して決められている場合があります。工事の見積りを依頼する前に禁止事項等を確認しましょう。

水漏れ

分譲マンションの専有部分は多くの場合、防水処理がされていません。玄関、バルコニーでの水洗いによる掃除は避けましょう。また洗濯機の排水、エアコンのドレンホース(排水ホース)の外れ(接続不具合)による漏水も注意が必要です。

緊急時の対応・名簿作成

火災や震災などの災害から居住者の生命、財産、生活を守ることも管理組合の重要な役割のひとつです。火災・地震・警報作動・断水・エレベーター異常などが発生したときに、連絡先、対応の手順などをマニュアル化し防災訓練を定期的に実施しておけば、慌てずに対応できます。迅速な対応を行うために、区分所有者と居住者の名簿を作成し、緊急連絡先を整備することは大切な備えです。名簿の取扱いについては、個人情報の保護に気をつけ、ルールを定めて適正な管理が必要です。日頃から緊急時の対応について確認をしておきましょう。

 

 

賃貸借契約(分譲貸し)

分譲マンションのルールやマナーは区分所有者だけではなく借りている人にも及びますので、分譲マンションを貸す際には必ず管理規約・使用細則を渡しておきましょう。管理組合への届出等が必要な場合もありますので、貸す前に管理規約を確認しましょう。住戸を貸して住んでいない区分所有者(不在区分所有者)も管理組合の一員ですから、管理組合の活動には関心を持つことが大切です。総会の通知などは現住所に届くように手続きをしておきましょう。

参考サイト

 

分譲マンションに関連する主な法律

 

分譲マンション管理に関する制度情報