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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

81号トピックス

 

 現行の民法には、売買の売主の負う責任の一つとして「瑕疵担保責任」というものがあります。

 土地、建物、中古自動車といった代わりが利かない物を売った際に、隠れた「瑕疵」(欠陥)があれば、買主はその瑕疵を知った時から1年間は、契約を解除したり、損害賠償の請求をできるというものです。例えば、家を買ったら雨漏りが発覚したといった場面で、屋根の防水が不十分だったが、契約時には分からなかった(隠れていた)等として売主に責任追及がされるといった場面で用いられます。

 これの責任は、代わりが利かない物の売買という局面にのみ適用され、また、短い行使期間の制限があるものの、売主に過失がなくても免れることができない責任とされ、売主にとっては大きな負担となっていました。

 この点については、従来から、代わりが利かない物の売買に限ってこのような特別の責任を認める必要があるのかという批判を中心に学界の中でも議論があったところでしたが、結論として、今回の民法改正において「瑕疵担保責任」という特別なルールは消滅することになりました。

 代わって、改正民法(2020年4月1日改正施行)では、代わりが利かない物か否かに関わらず、売買の売主は「契約内容に適合した物」を給付しなければならない、というルールに統一し、それに違反すれば一般の債務不履行の責任が生じるものとして、ルールや効果の点で他の場面と同じ取扱いとしました(「契約不適合責任」と呼ばれています)。

 その結果、従来の瑕疵担保責任では売主が無過失であっても責任を免れなかったという点は、一般の債務不履行と同様に、過失がなければ責任を負わないこととなりました。

 他方で、従来の瑕疵担保責任のルールの中では、契約全体を解除するか、損害賠償するかしか方法がなかったのですが、それらに加えて、買主側の選択の応じた修補、代替物引渡しといった追完の請求ができるようになり、さらには、売主が追完請求に応じない場合には代金の減額を請求することもでき、解決の選択肢も広がることになります。

 また、行使期間についても、従来の瑕疵担保責任では、買主が不具合(瑕疵)を知ってから1年以内に、請求する損害額の根拠等を示して請求をしなければならないとされていましたが、改正民法では、(正確に言えば不適合の内容によって異なるのですが)とりあえず1年以内に不具合の内容を「通知」すれば足りることとされました。

 

弁護士 中 村 昭 喜