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大阪市 住まいのガイドブック あんじゅ

アートな存在「西長堀アパート」と大理石壁画 西区

特徴的なストライプ状の外観。
今見てもモダンで新鮮な印象。

 

 

西長堀アパートは、1958年に建築され、11階建、8 種類の住戸タイプ263 戸というその巨大さから当時「マンモスアパート」と呼ばれ、人々に大きなインパクトを与えた。


現在は大阪市の「生きた建築ミュージアム・大阪セレクション」にも選ばれている。
また、同アパートは、日本住宅公団(現 U R 都市機構)による、東京都の晴海団地高層アパートと並び都市型高層住宅の第 1 号である。

 

 

 

「築50年を超えていますので、通常建て替えを検討するのですが、戦後の大阪市の建築史上でも価値があるものとして残されました。2016年の耐震補強工事を含めた大規模な改修工事を経て、現役で居住者がいる貴重な建物です」とU R 都市機構・西日本支社大阪エリア経営部企画課の中村友哉(なかむらともや)さんは話す。

UR都市機構・西日本支社大阪エリア経営部 
企画課の中村友哉さん。

 

「竣工当時はアパートの北側が長堀川に面していたこともあり、水面に浮かぶ客船をイメージしたのでしょう。
全長約 120mに及ぶ外壁には、幅の細い縦長のスリット窓が連続する。
この北側の外観は、シャープで洗練された印象を与え、共用廊下をこの外壁で覆ったことで生活感を感じさせず、まちの景観へ配慮されています。


 巨大な建築物を建てるという、当時の意気込みやまちへの責任感が伝わってきます。
住人からは、古くて味のある建物に住むことができる。
また都心でありながら部屋は広くて安価なところが魅力と聞いています」と、団地愛好家の建築家・吉永健一(よしながけんいち)さんは話す。

 

団地愛好家、建築家の吉永健一さん。

 

 

 

竣工当時の西長堀アパート。
外観が、長堀川に映える。
UR都市機構提供
建築当時の様子のわかる住戸
建築当時の様子のわかる住戸

赤い大理石はフランス、黄色はイタリア、
淡桃色はポルトガル、黒はベルギー産。   
世界各地の石で製作されている。

 印象的なデザインと共にもう一つの魅力が、玄関ホール奥にひっそりと鎮座する壁画である。
この大理石の壁画は、戦後関西を代表する芸術運動「具体美術協会」の創始者である吉原治良によるものである。

 

色紙を手で引裂いて紙に張り付けた原画をもとに、世界各地の色とりどりの大理石と御影石などによる楽し気な構成となっている。
 

その壁画は建設後に設けられた談話室の間仕切りにより、長らく鑑賞できない状態にあったが、2016年の改修工事により、再びエントランスに姿を現した。

「改修工事の際、住人の方から、あの壁画は壊すの?見えるようにしてほしい」という意見があったと中村さん。

 

吉原治良は「偶然の出会いといいますか、壁画の前に人が立ってもいい、植木鉢が置かれてもいい、また家具が置かれてもいい、思いがけない美しさが感じられることがある。(注)  」と語っている。

(注『建築と社会』((一社)日本建築協会) 1  9  5  9 年 4 月号転載)

 

西長堀アパートもまた、そこに人々が住み、生活があるからこそ、そのアート性が際立つのでしょう。

1階北側の共用廊下の様子

 

 参考文献:『建築と社会』 1 9 5 9 年 4 月号(一社)日本建築協会