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2008シンポジウム「大阪市の耐震化と防災」

投稿日 2008年11月30日(日)
更新日 2008年11月30日(日)
 
日時:2008年11月30日(日)13:00~16:30
場所:大阪市立住まい情報センター 3階ホール
主催:大阪市立住まい情報センター/大阪市耐震改修支援機構
協力:財団法人大阪市消防振興協会/住まいのライブラリーボランティア
 
当日は、小春日和の中、254名という大勢の方々にご来場いただきました。
参加者並びに関係者の皆様、ありがとうございました。
 
 
開場時の様子

 

 


 ■ 1.開会の辞
大阪市耐震改修支援機構 代表理事北山啓三が、本シンポジウム開催の主旨を説明。
 
 
 
あいさつの様子
  
大阪市耐震改修支援機構
北山啓三代表理事

 

 

 


■ 2.基調講演:大阪の耐震化を考える 関西学院大学総合政策学部教授 室﨑 益輝
 
講演の様子
 
<はじめに>
街として、大阪市の住まいの安全性をどのようにすれば確保することが出来るのか、考えてみたい。
 
<大震災の教訓・・建築物の危機管理>
■ なぜ、多くの生命が奪われたのか? なぜ、多くの建物が倒壊したのか?
→建築物の「地震に備えての危機管理」が欠落していた!
戦略性、包括性、実行性のある防災対策を危機管理という!
 
<倒壊の原因を考える>
■ 建物が古いから、屋根が重いからなのか?
維持管理がよければ壊れていない
架構や土台が堅固であれば壊れていない
■ 阪神、中越、能登の地震の建物被害を分析すると!
「作り手」の設計施工、「住み手」の維持管理、そして「導き手」の監督指導が、問われている
 
<震災被害の防止をいかにはかるか?>
■ 倒壊による被害の軽減をいかにはかるか?
(1)倒壊による被害には、①人命被害、②財産被害、③生活被害、④文化被害がある,
(2)被害の軽減をはかるには、①維持管理、②耐震補強、③危険度判定、④再建支援が欠かせない
 
<耐震補強とは?>
■ 耐震補強とは、建築物の建替え、改築、補修、補填などにより、耐震性を高めて、被害の軽減(倒壊の確率や倒壊による死傷の確率の低減)をはかること
■ 建替えや改築などの、新陳代謝型の補強も含めて広く考えること・・ただし、「いずれ建替えをするから」という待ちの姿勢は避けること
 
<耐震補強の方法は?>
■ 耐震補強の方法には、破壊をもたらす地震動の
①エネルギーに堪えうる構造とする、
②エネルギーを和らげる構造とする、
の2つがある
■ 一般的には、技術的な容易性や信頼性から、前者の剛性や強度をあげる方法が、推奨されている
①構造体の強度をあげる・・壁、基礎、接合部、床面どの補強をはかる、
②不具合の補修をはかる・・腐朽部分や手抜き部分の取替や補修をはかる
 
<耐震補強の必要な建物は?>
■ さしあたり「地震時の倒壊により人的被害が予想される建物」に耐震化が要求される
(1)耐力壁等が不足あるいは不均等
壁が少ない、柱が少ない、柱が細い、壁や柱が不均等・・建築基準法(1981年以前)との関係
(2)建物全体の形状がアンバランス
ピロティ、L字型のプラン、複合構造など
(3)施工や管理におけるミスによる劣化
手抜き工事、未熟な施工、腐食や蟻害など
 
<耐震化はなぜ進まない?>
■ 耐震化を阻む「5つの壁」がある
(1)資金の壁・・補強のための資金が確保できない
(2)技術の壁・・低コストで効果的な技術、日常機能に支障を与えない技術がない
(3)制度の壁・・インセンティブや強制力をあたえる制度がない
(4)意識の壁・・行政も市民も耐震を進めようという意識や姿勢がない
(5)運動の壁・・補強を進めるための運動論がない
 
<耐震化を進めるために・・私の提案>
■ 「家検制度」の提案
(1)10年ごとに耐震診断を義務づける
(2)診断で耐震性がないと判定された建物には、補強を義務付け
(3)補強の費用は、原因者負担とする
(4)耐震性ありと判定された建物は、税制の優遇措置や地震保険料の減額、倒壊時の支援金の増額を受けられる
 
<ところで「耐震化主義」の問題点>
■ とはいえ、近視眼的に耐震化だけを追求してはならない・・4つの問題点
(1)地域全体との関係・・危険な建物をカンフル注射で生き長らえさせるだけ、まち全体の老朽化や危険性の解消にはならない
(2)火災危険との関係・・中途半端な耐震化は市街地火災の危険を増長する、耐震改修と防火改修の融合が必要
(3)維持管理との関係・・最も大切なのは、維持管理であることを忘れてならない
(4)再建支援との関係・・耐震補強と再建支援は車の両輪
 
<最後に・・なぜ大阪か?>
■ 危険な建物、危険な地域が大阪には集中している・・国交省が平成15年に発表した「重点密集市街地」(震災の危険性の高い市区町村)のベスト20のうち11が大阪府の市区、ベスト6は大阪府が独占
■ 巨大地震(海溝型地震や直下型地震)の発生が危惧されている・・少なくとも南海地震はもうすぐ、上町断層地震等の発生も否定できない
  
室﨑 益輝
(むろさき よしてる)
関西学院大学総合政策学部教授・神戸大学名誉教授
1944年8月、尼崎市生まれ。1967年3月、京都大学工学部建築学科卒業。神戸大学都市安全研究センター教授、独立行政法人消防研究所理事長、消防庁消防研究センター所長を経て、2008年より現職。日本火災学会賞、日本建築学会賞、都市住宅学会賞などを受賞。京都大学防災研究所客員教授、日本火災学会会長、日本災害復興学会会長、中央防災会議専門委員、人と防災未来センター上級研究員、海外災害援助市民センター副代表などを歴任。著書に、地域計画と防火、危険都市の証言、建築防災・安全、大震災以後など。

 

 

 


■ 3.ミニセミナー テーマ1:震度6強の地震が来てもあなたの家は大丈夫? 松峯 哲也
  
講演の様子
 
まず、耐震診断、現地調査の内容として、
1.ヒアリング、2.間取り調査、3.外部調査、4.内部調査、5.小屋裏、床下調査
が挙げられます。その結果、診断結果は「上部構造評点」で表され、
・評点1.0以上 まずは安心、・評点0.7超-1.0未満 やや危険、・評点0.7以下 倒壊・大破壊の危険
といった値で評価されることになります。
 
その評価結果を受け、地震に強い家にするためには、
壁量の確保、バランスのとれた壁の配置、柱・梁・筋かい等の接合部の補強、建物の一体性、基礎の健全化、腐朽や蟻害の補修、屋根の軽量化
といった対策を採ることで改善可能となります。
 
<まとめ>
地震に強い家は健康な家
・耐震診断は、住まいの健康診断!耐震診断をすることによって、あなたの住まいの健康度がチェックできます。
・耐震補強工事は、住まいの病気の治療です!補強工事によって、健康な家に生まれ変わることができます。
  
松峯 哲也
(まつみね てつや)
NPO法人住宅長期保証支援センター

 

 

 


■ 4.ミニセミナー テーマ2:外出中に地震にあったら、家族と集まる場所を決めている? 川上 雅司
  
講演の様子
 
<家族と集合場所を決めている?>
まずは、地震に備えて家族で防災会議を開きましょう。防災会議では、家族一人ひとりの役割を決める、危険箇所をチェックする、「非常持ち出し品」と「非常備蓄」をチェックする、防災用具をチェックする、緊急連絡カードを用意するなどについて対策を話し合いましょう。
 
<地震がおきたら!?>
また、実際に地震がおきたら次のように行動しましょう。
○地震だ!(3秒)
落ち着いて身体をかくせ、火に近づくな
○揺れがおさまった(3分)
ラジオ・テレビをつける、火元を確認、くつ・スリッパをはく、余震に注意
○みんな無事か!(3時間)
ブロック塀やがれきに近づくな、車で逃げるな、公衆電話を使う
  
川上 雅司
(かわかみ まさし)
大阪市危機管理室危機管理担当

 

 

 


■ 5.ミニセミナー テーマ3:いざというとき、重要な学校や区役所、消防署などの耐震化ってできている? 鈴木 和弘
 
講演の様子
 
災害時に重要な役割を担う公共建築物について、「災害対策施設等」として、
・災害応急対策活動に必要な施設(区役所、消防署、病院、浄水場、下水処理場、焼却工場等)、
・避難所および災害対策活動を支援する施設(小中高等学校、老人保健施設、大規模スポーツ施設等)、
・人命および物品の安全性の確保が特に必要な施設(危険物貯蔵・取扱施設、不特定多数の者が利用する施設等)があります。
 
その災害対策施設等の耐震化の現状として、
全体(4,192棟)の約83%(3,463棟)が新耐震基準と同等(昭和56年の建築基準法の改正以降に建築されたものと同等の耐震性をもつ建物)の耐震性を持つ施設となっています。
今後、さらに計画的に耐震化を推進し、平成27年度までの完了を目指しています(計画年度:平成20年度~平成27年度)。
 
今後の災害対策施設等の耐震化の進め方として、
・耐震性能が特に低い施設については、原則として計画年度の前半(平成20~23年度)に耐震化を実施します。
・災害応急対策活動に必要な施設のうち、災害対策の指揮・情報伝達等の中枢拠点となる区役所や消火活動の拠点となる消防署については、重点的に耐震化を推進します。
・学校園については、避難所に指定されていることから、原則として計画年度の前半(平成20~23年度)に耐震改修を実施します。
  
鈴木 和弘
(すずき かずひろ)
大阪市都市整備局公共建築部 ファシリティマネジメント担当

 

 

 


■ 6.質疑応答、まとめ
積極的に参加者から質問が寄せられ、講師陣が回答しました。
また、質疑応答の後、室﨑教授による「本シンポジウムのまとめ」がなされました。
  
質疑応答の様子
  
まとめの様子
 
 <室﨑教授による本シンポジウムのまとめ>  
 耐震化は、急いでしっかりと取り組みましょう。南海地震は、意外と早く起こるかもしれません。
 家屋の耐震化は、まず「命」を守ることを考えてみましょう。そのためには、信頼できる専門家(大学教授・設計士・大工さんなど)や公的機関に相談してみましょう。
 最後に、私の提案として、「家検制度」があります。それは、10年ごとに「耐震診断」を義務づけ、
・耐震性無し と判定された建物には、耐震補強を義務付け、
・耐震性有り と判定された建物には、税制の優遇措置や地震保険料の減額、倒壊時の支援金の増額を受けられる、
といった制度であり、このような支援策を専門家や行政が長期的に推し進めることで、地域の防災意識が生まれ、災害に強いまちづくりとなります。
 

 

 


■ 7.閉会の辞
大阪市立住まい情報センター 所長篠原薫が、本シンポジウム閉会のあいさつ。
 
あいさつの様子
 
<閉会のあいさつ>
 最近、各地で頻繁に起きている地震が、いつ自分のところにも起きるかわかりません。皆様の防災活動に、本日のお話を役立てていただき、いざというときあわてないで行動できるよう ご準備ください。
 また、住まいの耐震化につきましても、本日だけではなく 平素からご相談の窓口として、「大阪市立住まい情報センター」と「大阪市耐震改修支援機構」がご案内をしておりますので、どうぞご利用ください。
 最後に、当センターは来年10周年を迎えます。皆様からの、ご意見・ご要望をいただき、より一層のサービス向上をしていきたいと考えております。10周年を記念いたしました行事なども計画しておりますので、今後とも当センターのご利用をお願いいたします。
 
 
 大阪市立住まい情報センターは来年10周年を迎えます
  
 
大阪市立住まい情報センター
篠原薫所長

 

 

 


 <個別相談>
・大阪市耐震改修支援機構による個別相談
耐震・建替え・リフォーム関係の個別相談を行いました。
 
<同時企画>
・耐震化情報・防災グッズ展示コーナー
耐震シェルター、防災グッズ、防災パネル展示のほか、耐震や防災に関する資料の配布を行いました。
 
耐震シェルター展示の様子
 
防災グッズ展示及び資料の配架の様子
 
防災パネル展示の様子
 
財団法人大阪市消防振興協会による消防、防災グッズ展示の様子

   

※資料等協力企業:
江崎グリコ株式会社、大阪ガス株式会社、大阪管区気象台、大阪市、大阪府、関西電力株式会社、西日本電信電話株式会社、明治製菓株式会社、森永製菓株式会社、ヤマザキナビスコ株式会社(順不同)

 

 

 


  


 参加者の声(抜粋)
 ・室﨑先生のお話が具体的でわかりやすく、又楽しく拝聴いたしました。川上さんのお話で日頃の備えや、再確認点を拝聴でき参考になりました。
・具体的に多くの事が参考になった。
・危機管理の自分自身の意識づけが出来た。