ページの先頭へ

第28回大阪市ハウジングデザイン賞表彰式開催記念  暮らし再考! いま考える新しい住まいのカタチ!

投稿日 2015年3月18日(水)
更新日 2021年9月17日(金)

2月11日、「第2回大阪市ハウジングデザインシンポジウム」が開かれました。

良質な住まいやまちづくりへの関心を喚起しようと、大阪市がハウジングデザイン賞を設けてから28年。
今回は88件の応募の中から、新築の「グランフロント大阪オーナーズタワー」と「パークタワー梅田」に大阪市ハウジングデザイン賞、中古の「ファミールハイツ北大阪2号棟」に同特別賞が贈呈され、会場から大きな拍手を浴びました。表彰式についで行われた基調講演とパネルディスカッションでは、これからのさまざまな新しい住まいの形が提案されました。

 

基調講演 暮らしづくり街づくりのリノベーション  

大島 芳彦氏 (㈱ブルースタジオ専務取締役、クリエイティブディレクター、建築家)

 空き家は800万戸を越え、空室率は13.5%に。全住宅のうち既存住宅(中古住宅)の流通量を比較すると、英国88.8%、米国77.6%に対し、日本は13.5%。もっと中古住宅を暮らしの選択肢として考えてよいのではないでしょうか。住宅の一次取得層にとって「家を造る」という概念は「暮らしを編集する」概念に変わりつつあります。自分の暮らしを豊かにするために、一人ひとりの暮らしを編集する。我々建築家には創造力より想像力が問われています。
 新しい暮らしの選択肢の一つが、付加価値型の賃貸住宅を選んで住みつないでいく「新賃貸派」。もう一つは、流動化しやすい中古住宅を買い、身の丈の暮らしを住みつないでいく「流動資産派」。賃貸住宅や中古住宅に自分らしく手を入れて住むライフスタイルが生まれ、リノベーションが役立っています。
 建築設計事務所のブルースタジオを設立して15年。建築物を作るだけでなく「モノ・コト・時間」のデザインをきました。中古住宅を探してリノベーションして提供するワンストップサービスで、1年に70棟ほど手がけます。
 ある顧客は30代前半のシングル男性で、都心の外資系勤務。長い住宅ローンを組んで未来を固めたくない。趣味は映画。だから50㎡の中古マンションを、ホームシアター中心の暮らしにリノベーションしました。映画好きの友達が集い、うらやましがられています。
 消費者に選ばれる賃貸住宅や持続可能な生活環境とは何かを考えると、共同体としての価値に行き着きます。賃貸住宅のオーナーは共同体の首長。どんな住環境にしたいと理念があれば、それに共感する入居者が集まり、柔らかいつながりを広げていきます。「あなたでなければ」「ここでなければ」「いまでなければ」を説明できれば、共感を呼ぶオンリーワンの住環境になります。リノベーションは「物件」を「物語」に変え、その物語に共感する人の輪をげ、価値観を共有することにつながります。
 ある公団住宅は竣工後50年が経ち、敷地内に20mのケヤキのある森ができていました。この森と同様に団地が積み重ねてきた時間や関係に価値を見いだし、再生することに。今では1棟がシェアハウスになって学生たちが住み、残る2棟には子育て世帯や高齢者世帯が住み地域住民と菜園づくりを楽しんでいます。
 練馬で区民菜園に隣接する場所に、賃貸住宅「青豆ハウス」を建てました。建築前からブログを立ち上げ、生活予想図を発信。上棟式には地域の人を呼び、新米のおにぎりをふるまいました。理念に共感した人が集まり、家賃15~18万円で入居者が決まり、みな入居前からずっと仲良しです。
 「きっかけをデザインする」のも私の仕事で、やる気を失っている大家さんたちにリノベーションスクールを開いています。良質な資源を活用したまちづくりとビジネスモデルを描いています。総合力をもったリノベーションアーキテクトの養成も必須ですね。

 

パネルディスカッション 

新感覚! これからの新しい住まいのカタチと暮らしについて考える

<コーディネーター>
 髙田 光雄 氏(京都大学大学院工学研究科教授、博士(工学)、一級建築士、大阪市ハウジングデザイン賞選考有識者会議委員長)
<パネリスト>
 大島 芳彦 氏
 荒井 直子 氏(フリーライター、編集者)
 江川 直樹 氏(関西大学環境都市工学部教授、KSDP団地再生プロジェクト代表、大阪市ハウジングデザイン賞選考有識者会議委員)

 

高田 新しい住まいのカタチと暮らしについて、江川先生と荒井さんから短いプレゼンテーションをお願いします。
江川 戦後、団地という形で集合住宅が供給され、今では大量のストックを抱え、建て替えは困難です。周囲との関係が希薄という欠点も団地は抱えています。
 90年代以降、都心の空洞化の解消や地域再生・まちづくりの側面から団地は住宅市街地として創られるように。JR兵庫貨物駅跡地の再開発では、運河を敷地内に引き込み、多様な住宅棟や商業施設など市街地住宅をつくりました。都市の生活空間として「外部空間」は大切です。阪神・淡路大震災の復興計画では、地域再生の拠点として復興公営住宅と商業施設とが一体化。復興公営住宅のオープンスペースに住宅の住民が地域の人が共存し、交流しています。
 団地を建て替える際には、街全体に安心・安全な空間を醸し出し、集合住宅を含め街のみんなが連続するように設計します。昭和30年代に竣工した八幡市の男山団地の建て替えでは、賃貸、分譲、戸建て、高齢者施設、商業施設、学校などが混じり合う計画です。学生が住み込んで住民と話し合ったり、提案を検証したり、八幡市、京都府、大学、URとともにまちづくりを考えています。団地の再編のための連携ではなく、地域をどうするかについての連携です。
荒井 20年ほど不動産・住宅・インテリア・住まい方を取材してきましたが、今、住まいは“一つの自己表現”になっていると感じます。振り返ってみると、「個人」から「つながり」へ、「人と同じ」から「自分らしさ」へ、「所有」から「共有・共感」へ、「モノ」から「経験」へと価値観が変化しています。
 既存の住宅の細かく仕切られた間取りプランが自分たちに合わないと思った家族は、築40年以上の中古マンションをリノベーションしました。イギリス留学時にシェアフラットで暮らした人は、帰国後もシェアハウスを選びました。家族でも学校でも職場でもない、サードプレース、第3の人間関係、コミュニティを求めている人が増えています。
 食、畑、趣味、シングルマザーなどテーマを特化したシェアハウスも増えています。古い木賃アパートを再生した事例では、アトリエや中庭、縁側、路地など街とつながる装置があり、住宅が街に適度に解放されていました。大家さんが「住まいは設計者やオーナーだけで創るのではなく、人が住んで初めて成り立つ。住む人が自由な発想で使えるよう空白を残し、一緒に創りあげていければ」と話していたのが印象的です。
 「二拠点居住」というライフスタイルもあります。都心では賃貸住宅で暮らし、休日には郊外の中古リノベの家で暮らす。ワーク・ライフ・バランスへの意識が高い人ほど自分を解放する場所がいり、そこではいつもより丁寧に料理をつくる、本を読むなど暮らしを大切にしています。ネットでワードローブを管理するオンラインクローゼットや、外部に洗濯を依頼するランドリーサービスなど街の機能を使って、すっきり暮らすライフスタイルもあります。

 

高田 リノベーションに際して既存ストックの価値をどう発見しますか。
大島 特にリノベーション向きの物件があるわけではない。暮らす人が過去のコンテンツを知って暮らしていると知らないとでは充足感が違う。営まれている生活を考えて設計すると満足できます。
荒井 リノベーションは、自分のしたいことを等身大に実現できる手段。古いものの中にある人肌の暖かみ、時間、経験などを大事にして価値を見いだしていると感じますね。
江川 近代化の中でできた建築物や発想はすべて均質です。リノベーションのおもしろさは、いろいろなことが混ざること。混ざった中で自分が過ごしているのがおもしろい。
大島 ヨーロッパの住宅と異なり、日本は古いものを凍結しないといけないと考えがち。アンタッチャブルな文化財ではなく、咀嚼して次の時代につなげていくことが大切ではないでしょうか。
高田 大島さんはリノベーションによって古いものと新しいものだけでなく、同時代のしがらみ、寝た子を起こしていませんか。
大島 リノベーションスクールはまさにその通り。地方の中心市街地再生において、商店街のオーナーたちはもう何に価値があるかわからなくなっています。「よそ者」「若者」の目線で歩くと、おもしろいことがたくさん見つかり、価値を示せます。
江川 今までの制度が足をひっぱっていることも少なくありません。代替わりをすると、街の価値観は大分変わりますね。
荒井 若い人がコミュニティ、つながりを求めていると感じます。上の世代がやめてしまったことが新鮮に映るのです。

 

高田 次に「街に住む」というキーワードについて。家を考える時に「外部空間」の重要性や「都市の中のサービス」をうまく使って暮らすという点が指摘されましたね。
江川 街に住むことは、自分らしさのみならず他人らしさを尊重すること。昔のコミュニティは均質的だったけど、今は使い分けができる多様なコミュニティがあり、いろいろなライフスタイル、ライフステージに居場所があります。家についても機能的に整理しすぎない、合理的、計画的に作りすぎない方がいいと思いますね。
大島 外と内、内と内の関係性がクオリティにつながります。建物本体の価値ではなく、街の価値を上げる、外部空間の価値を上げる方がいい。シェアハウスは閉塞的だと感じるようでは本末転倒で、街の機能として考えていきたい。
 

高田 最後に「自分で創る」というキーワードについて。
江川 賃貸住宅には手を加えられません。現状復帰して退去しろと縛ってきましたから。それでは環境が豊かになりません。DIYは、自分自身でやってもいいし、工務店とやってもいい。家づくりは事業主だけがするのではなく、いろんな人が協同でやれるといい。
荒井 たとえ失敗しても、経験することが大事です。経験に対する価値を見いだし、人と一緒に楽しみをシェアするのがいいですね。
大島 DIYは当事者意識をもつことが大切です。オーナーにとっても、いい住宅をわざわざ原状回復するのはもったいないのでは。
高田 住まい手が家と街にどうかかわっていくか、それをどう支援するか。人と家、人と街の関係を見直し、価値をどう育てていくかがこれから重要ですね。