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第3回大阪市ハウジングデザインシンポジウム【1】

投稿日 2016年7月21日(木)
更新日 2021年9月17日(金)
家2 特集 あなたの夢が実現! 家
リノベーション住まい・暮らしはこう変わる
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平成28年2月13日、大阪市立住まい情報センターで第3回大阪市ハウジングデザインシンポジウムが開催されました。 まず第29回大阪市ハウジングデザイン賞に選ばれた賃貸マンション「住 真田山」(大阪市天王寺区真田山町)が表彰され、次いで記念講演とパネルディスカッションが行われ、これからの住まいと暮らしを考える機会となりました

記念講演 「まちを暮らしをリノベーション」 

まちを編集して見直す
 1700余の自治体のうち半数ぐらいが、義務的経費でさえ自主財源でまかなえていない、つまり赤字。小さな地域経営で域内経済を自立させることが先決です。
 そのための手法が「まちを編集すること」。ポイントは、「誰に」「何を」「どのように届けるか?」「そのことで何が生まれ、豊かになるか?」を考えることです。
 私どもの研究室は昨年夏、福岡市のショッピングモール・キャナルシティ
博多の「無印良品」で、「MujiTrail」というリノベーションプランを実施しました。店内の床に4色のカラーテープの路線を貼り、その路線を伝っていくと、文具の場所や食品の場所、自分へのご褒美を買う場所、家族のものが揃う場所などへ到着できる仕掛けです。途中で待ち合わせをしたり、路線を乗り換えたりする場所もあります。「もともとある資源を使って、ちょっとした原理に従って編集」したのです。
 この仕掛けによって集客数は伸び、イベントの実施期間は延長され、普段はあまり店に親しまない子どもたちも大喜び。「まち」と言うと、大きすぎてわかりませんが、店舗をまちと見立てるとわかりやすい。これが編集の一例です。

ハコを「つくる」から「使う」へ
まちづくりにおけるリノベーションとは、「地域資源を再発見しながら最大化して、豊かな暮らしを自らの手で築く」ことだと考えています。地域資源とは、これまで地域が育んできたヒト、コト、モノ、トキ、カネすべてが含まれます。
 まちづくりに必要なベクトルを考える上で、観光政策を例に挙げてみましょう。今までの観光政策は「非日常性」「偏在性」「一過性」というベクトルのキーワードで表されていました。これからは「日常性」「唯一性」「持続性」に移るだろうと予想しています。どこのまちにでもあること(偏在性)でなく、ここにしかないこと(唯一性)は観光政策もまちづくりでも同じです。

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徳田 光弘 氏       (九州工業大学大学院准教授)

 わが国の住宅政策は、戦後の厳しい住宅不足から始まり、1968年に住戸数と世帯数がほぼ同数となりました。83年からは住戸数が世帯数より上回り、今では総住宅数6063万戸のうち空き家820万戸、空室率13.5%になっています。ある程度のストックは必要ですが、今は多すぎます。バブル期には1年に170万戸ほど住宅が新設されましたが、今は100万戸へ減りました。が、ヨーロッパ諸国の新設住宅着工数は1年あたり10万戸から40万戸ですから、日本は今も昔も多くの新築住宅に頼っています。
 建築系の学問を修めた学生は1年に1万4000人輩出されていますが、建築物の着工数は減っており、市場と就労に乖離が生まれています。教育の社会システムの点からも、ストックを活用する仕事に就く学生を送り出さなければならない。社会も教育現場も、ハコを「つくる」時代からハコを「つかう」時代になっているのです。

山積する地域課題をどう解決するのか
北九州は20世紀初めから、重化学工業を軸に北九州工業地帯の中心地として栄えました。当時の商店街は大にぎわいで、まちの旦那衆が自分たちの手で魚町(うおまち)という中心部の商店街に日本初の公道上アーケードをつくるほどでした。
 北九州市の人口は最大107万人で今は96万人、高齢化も進んでいます。八幡製鐵所(現・新日鉄住金)の従業員数は、7万人から2800人に減りました。機械化など、生産性の効率化によって雇用が減っていったのです。雇用を生まなくなると消費人口が減り、社会システムが変わります。これからの北九州は、産業構造の変化によって、例えば大きなものづくり産業から小さなものづくり産業へ、新たな雇用を生む産業を創出しなければなりません。
 他方、北九州の路線価は2000年以降、最大で9分の1に、平均で3分の1に下がり、資産価値が低減しました。土地の魅力がなくなったわかりやすい事例です。
 私たち世代には、商店街がにぎわっているのが原風景で、それを再現できないかと考えますが、今の子どもたちの原風景はシャッター商店街。大人になってからこの商店街を守っていこう、ここで何かビジネスをしようとは思わないでしょう。これら山積している地域課題を解決しなくてはならない。単に空き家や空きビルだけをどうにかしたらいいわけではないのです。

無いものねだりから、有るもの探しへ
 まず、私たちはまちを歩きまわって、「これは資源だ、宝だ」と思うものを発見して決めつけました。「無いものねだりではなく、有るもの探し」をしていくのです。
 私が代表を務めるリノベーションスクールは、半年に1回、3、4日間の短期で集中講義をします。8人1組で1ユニットを組み、実案件を出し、再生事業計画を考え、ユニットマスターがそれを支援します。レクチャー、ワークショップ、ショートプレゼンテーションを毎日行い、最終プレゼンテーションをして、リスクをとって事業化に向かう実践型のスクールです。
 ポイントは、しっかりしたマネジメントの仕組みを取り入れたことです。有志4人で設立した「北九州家守舎」という会社が、不動産オーナーや行政と、ビジネスオーナーをつなぐ仕事をします。ハコをもっている人と、ハコを使う人をマッチングさせるのです。その結果、3、4割が事業化されました。3つの具体例を紹介しましょう。
 まず、「MIKAGE1881」。北九州の中心街にある空きビルを、コワーキングスペースとしてリノベーションしました。お金をかき集め、まちの人に呼びかけ、プランを見直し、初期投資額を400万円に抑えました。ソファはもらってくる、キャビネットにある雑誌は入居者が持ち寄る…そうしているうちに入居者による自治が生まれました。みんなで食事会やイベントをしながら、若い事業者がまちに入り込み、まちを元気にしてくれました。
 中心街にあった廃屋をリノベーションして、レンタルスペース&カフェにしたのが「三木屋」。ワークショップという名の下に廃屋の掃除をしていたら、賛同した町の人が焼きそば100人前を提供してくれるなど、ユニークな輪が広がりました。今では多くの人が集まる文化施設で、ヘルシーな食事が楽しめる場所になりました。
 「COCLASS」は、古いマンションをリノベーションしたシェアハウス。エレベーターもないし、懐かしいけど住みたくないという雰囲気でした。用途変更をして、2住戸をくっつけて、個室5区画と共用のリビングダイニング、浴室、トイレをつくりました。手間はかかりますが入居者とともに壊しながらつくっていくと、賃貸ですが入居者に愛着がわき長年住んでくれるようになります。口コミが広がり、今では「ここに住みたい」と部屋が空くのを待たれる人気物件になりました。

リノベーションで社会システムを変える
 こうしたプロジェクトの結果、この4年間で、単に空き家を再生しただけではなく、雇用が400人ほど増え、商店街の歩行者も3割増えました。こんなまちづくりを全国の40~50都市に広げていくうちに、仲間が増え、さらにいろいろな情報が飛び交うようになりました。
 地域資源を発見し、編集し、小さなことからコツコツつくり、無いものねだりから有るもの探しをしていけば、社会システムを変えていける。それがリノベーションによるまちの再生です。住宅地を消費地と生産地の混合体にして、小さな地域経営で域内経済を自立させるようにする。自分の周りの生活を豊かにしていくと、いつのまにかまちづくりになっていく。目の前のことからスタートしていいのです。

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